2018年2月3日(土)の昼下がり、mumokuteki。
無目的ホールに集った50名もの老若男女。
こころ館スタッフ、研究生たちとその家族、
そしてあの中野民夫先生をはじめとするソーシャルイノベーター界隈の著名人の姿が。
行われていたのは、こころ館の「わたし研究発表会」。
「わたし研究」に取り組んできた研究生たちのこれまで・いま・そしてこれからを、ここまでの”研究”の集大成としてひとりひとりが発表する場として設けられました。そんな研究生たちにエールを送り、次なる旅立ちを一緒に応援しようというのがこの会の趣旨。
なかには遠く神奈川県から、この発表会のためだけにやってきたという来場者も。
かくいう私、青山も、東京から乗り込んだひとりです。
何がそんなに私をこの発表会へ駆り立てたのか。それは私自身が、この研究生たちに変わるきっかけを与えてもらった張本人だったからです。
遡ること3年前、こころ館では育児期女性を対象にした「ママキャリ講座」をスタートさせました。当時大学生だった私はその運営スタッフとして、時々講座の末席に加わっておりました。専業主婦で心配性の母のもとで育ち、しぶとい反抗期を経て大学生となった経緯から、その時「お母さん」といわれる人々を毛嫌いしていた私。
そんな私にとって、ママキャリ講座は未知との遭遇でした。
泣いて笑って、苦しみ悩んで時に停滞しながらも、
真摯に自分、そして家族と向き合う参加者たち。
その姿を見て、私は考えを改めざるを得ませんでした。お母さんも、ひとりの人間であること。彼女たちのポテンシャルは無限であること。事実を認めることの苦しさ、谷を乗り越えた人がまわりに与える勇気。回を重ねるごとに一皮むけ、二皮むける彼女たちの姿を見て思いました。「私は何をやってるんだろう」と。かたくなに自分を正当化しようとする自分が、恥ずかしくなりました。
ひとりが変われば、周りが変わり、そして社会が変わる。
それを私に教えてくれたのが、ママキャリ講座の参加者=わたし研究室0期生だったんです。
ママキャリ講座が発足した2年後の2017年からは「わたしを研究する」をテーマに掲げた「わたし研究室」が始まりました。働く女性を対象に1期生を募集し、講座を新しくスタートさせました。「ママキャリ講座」からの受講生5名は、0期生として継続的に学びを続け、今回の「わたし研究発表会」を最後に3年間の学びを修了し、卒業することになりました。
会の冒頭で中野先生から歌(3曲)とマインドフルネス講座とエールをいただいたのち、まずは1期生の”中間報告”が行われました。
自分の課題に気づいてから職場への不満がなくなった人、
隠れていた親への畏怖を認めて自分らしさを取り戻そうとする人、
自分や嫌だと思う人の特徴が、すべて自分に当てはまると気づいて衝撃を受けたという人、
会場には「劣等感のかたまりだった姉が奇跡のように変わった」と涙を流す研究生の妹さんの姿も…
まだ、わたしらしさを見つけきれたわけじゃないんだけれど、それでも何かを掴み始めた。変化の渦中にいる1期生の言葉が、ストレートに心を刺しました。
私は1期生との絡みはほとんどなく、初対面でどこまで受け取れるかしらんと不安に思いながら話を聴き始めたのですが(というか、会場にいたほとんどの方は私以上に「何かよくわからんけど誘われたから」と戸惑いながらの参加だったようです)、そんな懸念はすべて杞憂でありました。一生懸命話す人の姿って何でこんなに胸を打つんですかね。勝手に涙がこぼれてしょうがなかったです。
それから、卒業する0期生の”研究テーマ”発表。
3年間わたしらしい生き方を模索してきた0期生が紡ぎ出したテーマはこちらです。
▼私が私を幸せにする
▼一生懸命頑張る お母さんの心の拠り処になる
▼不登校児の親のガイドランナーになる
▼手仕事、刺繍で世の中のお母さんの笑顔を増やす!
▼お年寄りの心にある言葉にならない言葉を紡ぎストーリーにする
会場から「成熟している」とコメントがあったとおり、
0期生の発表はとても安定感がありました。
それぞれの挑戦は、すでに始まっています。
私たちが応援する間もないくらい、展開が早いんです。
これからどこまで化け続けるのか、見当もつきません。
出会った頃はみんな、頼りないし、か弱いし、見てるこっちがハラハラだったのになぁ。
そんな感慨にふけりながら、感想シェアタイムに会場をうろついておりましたら、発表を終えた0期生グループから声をかけられました。
「なんだかんだ、一番変わったのはえっちゃんよなぁ!」
え?
「そうそう、最初会った時は無表情で、能面みたいやったなぁ」
「全然笑わへんしなぁ」「この子大丈夫かな〜って思ってたわ〜」
え!?
「でもいまはこんなに笑うしなぁ!」
「ほんまやなぁ!」「よかったなぁえっちゃん!」
えええええ!!!!!
なんだ、一番心配されてたのは、私だったのか……
本当に、研究生のみなさんには、頭が上がりません。
ひとりの変化が波風を起こし、周囲へと伝播する。
研究生の変化にかつての私が揺さぶられたように、
研究生の発表が、そこに集った50名の心に確かに何かを刻んだように。
あの場に起こっていたのは紛れもないソーシャル・イノベーションでした。
まさにぬかどこ。イノベーションの連鎖は始まったばかりです。
青山絵美
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